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カウナス戦役 - 9

 窓の外は黒雲が空を覆っていた。今は小雨だが遠雷の音も聞こえてくる。密談日和ですな。とルベルが笑った。
 老侯爵はあまり感情を表す性格では無かったが、そういう捉えかたもあるか、と素直に感心した。
「黒鳩殿との交渉は?」
「ええ、全て滞りなく」
 胸を張るルベル。出費は痛いが、数千人分の武器を調達したのだ。滑稽な肉の塊とも評される彼だが、侯爵はルベルを信頼していた。
「密輸網にも意外な使い道がありましたな」
 ルベルの不正正当化に生返事をして侯爵は円卓の反対側を見た。ルベルとは好対照のすらっとした青年がそこにいた。
「リューゼル。徴兵の準備はどうなっている?」
「各農村への布告は完了しました」
 農村の現状を再確認した彼の表情は暗い。
「予定通り来週には第一団が編成される見込みです。そしてそのほとんどが、…覚悟はできています」
「そうか…。それでいい」
 侯爵は六千人の名前が書かれた徴兵票を眺めた。来るべき時が近づいている。来週には帝国に反旗を翻し…あの第四軍と、ベルトリッチと戦うのだ。
 訓練も十分でない民兵、最も実戦経験豊富な指揮官が三十年前に武官だった自分…状況は嫌でも彼を悲観的にさせた。
「帝国と皇叔軍の動きはどうなっているんでしょう? 第四軍は動きが無いようですが」
 リューゼルが問う。
「お互い足場を固めているようですな。叛乱軍は皇帝軍との衝突は避けて中立化した第七軍管区に攻め入っている様です」
 鼻をほじりつつ、ルベルが答えた。本当に貴族なのか疑いたくなるような男である。
 侯爵は立ち上がり、窓を見やる。ガラスの窓の外は雷雨だった。
「この戦乱、恐らく一年や二年では終わらぬだろうな…」
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