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カウナス戦役 - 8

「体制を打破する方法は一つしかありません」
「それは?」
「反乱です」

 リューゼルはゲーベンバウアー侯爵の副官としてカウナスを回っていた。徴兵令とそれに伴う領主達の説得である。既に侯爵とルベルの手により、四万人分の徴兵名簿は完成しつつあった。
「ずいぶんと、物々しくなりましたね」
 カウナスの首府ビリニュスの市街に、第四軍の憲兵達をよく見るようになった。徴兵に関して警備の強化という名目だが、本音は監視と威圧だろう。
 近隣のタリン州では大規模な暴動と苛烈な鎮圧が起こったという。彼らは罪人として最前線に送られるのだろう。

「ご帰還をお待ちしておりました。リューゼル様」
「そう畏まらなくてもいいよ」
 侯爵の侍従が館へと迎え入れた。歴史を感じさせる古い館。リューゼルは侯爵の執務室の位置は知っていたが、見慣れぬものを見て足を止めた。
 バルコニーから外を眺める白い少女。ドレスを纏い、侍従までいるということは高貴な人なのだろうか。この館には無縁そうな存在に惹かれ、彼女に声をかけた。
「何を見ていらっしゃるですか?」
「いえ…きれいだなって」
 少女が振り向いた。視線が合う。赤く濡れた瞳に理想的な造形の、ぞっとするような美少女だった。
「…姫には敵いませんよ」
 内心の動揺を隠しつつ、常套句を使う。常套句だが本心だった。
「姫?」
 少女は艶然と微笑み、胸の前で手を合わせた。
「姫に見えます?」
 堪りかねて侍従が前にでた。
「リューゼル様。このお方はネージュ・レヴィ=ブリュール様。侯爵様の妾姫でございます」
 …妾姫?
 あのご老人が?
「ネージュ様。リューゼル様はクラウス様の副官でございます。つい先ほど視察よりお戻りになられたとか」
「リューゼル・ケーニヒスベルガーです。ネージュ様」
 優雅に一礼する。
「姫と呼んでください、リューゼル様」
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