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カウナス戦役 - 5

 彼女が目覚めると、そこは貴族の屋敷を思わせるような調度の部屋だった。
「あれ…?」
 ベッドから上半身を起こして周りを伺う。絨毯。暖炉。窓からの光。小鳥の声。
 小柄な少女の身体を包むのは薄絹の黒い夜着。良く解らないが絹なのだろうか。
「夢…?」
 またベッドに横になると、彼女はここに至る経緯を記憶の中から探し始めた。
 自慢の豪奢な銀髪が顔に掛かる。夢ではないようだが思い出すことも出来ない。
「まるでお姫様みたい」
 環境を分析してそう感想を漏らす。お姫様。夢の職業だ。職業かどうかは別として。
 ベッドから這い出して、高級そうなスリッパを履く。窓の傍には薔薇が活けてあった。薔薇そのものは彼女にとってもそれほど珍しいものではなかったが、彼女は魅入られるようにを手に取った。
「きれい…」
 品種などの知識は無いが、鮮やかな赤と甘い芳香は高貴さを伺わせた。
 しかしふと振り向いた視線の先で、彼女は見つけてしまった。電流が走ったかのように、身体が震える。手から薔薇がぽろりと落ちていく。しかし彼女は視線を離せなかった。
「これが… 私?」
 彼女の目に映るものは古びた等身大の姿見と、同性ですら魅了しかねない美少女だった。
 …そういえば髪の量が増えた気がする。妖しく輝く赤い瞳。透き通るような白い肌。夜着一枚の姿が酷く扇情的なものに感じられた。爪の色が銀色に染まっているのに気づき、彼女は自分を抱きしめた。
「…胸まで大きくなってる」
 まるで自分の身体でないかのように、彼女は困惑した。鏡の中の自分も困惑している。鏡の中の少女は美しい姫君だった。やがて姫君は妖艶な笑みを浮かべて言った。
「可愛い。素敵よ茜」
 それは自分の声だったのか他人の声だったのか。恐怖が精神を襲い、彼女は気を失った。
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