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カウナス戦役 - 3

 今年27歳となる若き行商人、リューゼル・ケーニヒスベルガーは仕事を終え帳簿を付け、行きつけの酒場に着くなり、なじみの顔ぶれに取り囲まれた。

「僕はそんな器じゃないですよ」
 優美なる青年は困惑した顔で大男に答えた。
「いや、お前しかいない」
 荷運びの大男は即答した。
「頭の悪い俺でも、お前ならなんとかなることは解るさ」
 穀物売りが追い討ちをかける。
「リューゼル、それじゃあお前は戦場に行くのか?」
 テーブルの上にはルベルの発行した徴兵布告のビラ。
 四万人徴兵。
 殺気だった彼らを説得するのは骨が折れそうだ。
「帝国中央もよほど余裕が無いんでしょうね」
 ビラを手に取りつつ、リューゼルは呟いた。皇叔父派の叛乱軍はガーランドの戦いで中央軍に打撃を与えた後、帝国南部をほぼ掌握しコサック族たちも手なずけているという。
「戦場に無理やり連れて来られた、十分な訓練も受けていない僕らが行っても、そう役立つとは思えませんけどね…」
「使い捨てにするんだろうさ。中央が督戦軍になってな」
 乾いた笑いが酒場に響いた。逃亡兵への凄惨な仕打ちは帝国軍の有名な伝統だ。
「なあリューゼル。俺は思うんだが…」
 別の男が言った。
「お前は俺達と同じ生まれの筈だが、頭がいいし信仰心も人望もある。侯爵様みたいに、なにか高い教育を受けたみたいに思える」
「そんなこと無いですよ」
 否定しつつもリューゼルは説得困難に陥っているのを認めざるを得なかった。
「お前がどう思おうとここにいる皆や街の人間はそう思ってるよ。リューゼル、お前は【王者の相】だ。俺達を導いてくれ」

 酒場の扉が開き、息せき切った男が入ってくるのはその頃だった。
「暴動だ。クラウス侯爵様の館を二、三百人が取り囲んで押し合いしている」
 張り詰めていた緊張感に何かが加わった。
「リューゼル!」
 青年はため息を一つついた後立ち上がり、皆に言った。
「…行こう」

「でもルベルや侯爵様をどうにかするんじゃない。出来ることなら話し合いましょう」
 念を押す。男達が頷いた。命を預ける覚悟は既に出来ているのだ。
 リューゼルが帝国に滅ぼされた旧カウナス王族の子孫であることは彼自身しか知らない。
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