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カウナス戦役 - 2

 ルベル・ゲーリング男爵はカウナス最大の地主にて豪商であったが、同時に最大の体重の持ち主でもあった。
 金で地位を買ったとも言われるその男は、その肥満体を明らかに不釣合いな―ある意味では似合った成金趣味の礼服で押し込み、笑みを絶やさずにゲーベンバウアー侯爵の館に到着した。
「相変わらず質素な館ですなぁ…」
 その体重で赤絨毯に跡をつけつつ、ルベルは侯爵の執務室へと案内された。

 数時間の会見の後、館から馬車に乗り込むルベルは笑っていた。領民から陰口を叩かれる笑みであり、密貿易で巨額の財を成した時の笑みであり、政敵や商敵を屠った時の笑みだった。

 徴兵の布告が発せられたのは翌日の9月21日である。
 有力者の集めた演壇の上で、ルベルが演説を始めた。
「諸君。先月の臨時税の負担については皇帝陛下は甚く歓心しておられる。帝国軍は更に増強され、必ずや反逆軍たちを打ち倒すだろう。だが幸運にも我々カウナスが帝国と皇帝陛下に更なる忠義を示す時が来た!」
 彼は笑っていた。だがそれを聞くもの達は笑っていなかった。笑う余裕すらなかったのだ。
「カウナス、リガ、タリンの三州で合計十万人の動員が決定された。栄光の帝国第四軍は我々の力を必要としているのだ。我らカウナスは四万人の動員を命ぜられた。そう、これは勅令でもある!」
 事態の大きさに人々は意味を飲み込むのに一瞬の時間を要したが、次第にざわめきが始まる。
(この上戦争に行けだと…?)
(帝国が、皇帝が我々に何をしてくれた…?)
(何を考えている? 男は全て戦場に行けと言うのか…?)
 不穏な空気と視線に当てられながら、手続きの説明に移った。
 しかし既に人々の耳には入っていなかった。

 カウナスにおける最初の暴動はこの夜のことである。
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