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カウナス戦役 - 19

 暗闇の中で足音が聞こえ、囚われの暗殺者は目覚めた。
 時間の感覚など判らないがルベルのいう翌日とやらが来たのだろう。
(四人か)
 足音から人数を判断する。斬首か絞首か火刑かは判らないが、大人しく受ける気は無かった。
 靴の裏から鋼線を取り出すと、目を瞑り隠惑の魔法を思い描いた。
「幻惑候Sigismundよ、汝が姿を我が物とせよ」
 魔法の祝詞は精神集中の為の定型文だ、実際に悪魔が力を貸すわけではない。少なくともγはそう聞いていた。触媒の指輪は奪われていたが、いつも以上の魔力の放出の感覚を感じ、γは目を開いた。
 近づいた足音が止まった。鉄格子の向こうにカンテラの光に浮かび上がった人影が四つ。
「時間だ、起きろ」
 いつもの看守が牢の中に告げる。
「まだ寝ているのか?」
 看守が鉄格子の傍まで近づいた。彼の腰に鍵束があるのを確認すると、γの手から鋼線が舞った。
(起きてるさ)
「な……う?」
 何が起こったのかも理解できていない看守に対し、γは彼の首に巻きついた鋼線を更に締め上げた。崩れ落ちる看守。
「貴様!」
「何を!」
 男達がざわめき、腰に帯びた剣を抜きボウガンを構えた。カンテラを掲げて牢の中を伺う男達。鉄格子越しに撃ちもせず切りかかってもこないのは慎重なのか。
(……まだ隠惑が解けていないのか?)
 看守を絞め殺した際に魔法への集中は失っていた。本来ならばたちどころに姿が現れ、自分に斬撃が殺到するはずだった。
 が、男達の視線は光に照らされた自分を見ていなかった。
(それなら都合がいい)
 γは昏睡した看守から鍵を奪うとそのまま鍵を開けた。一人が無きに等しい気配を頼りに剣を振り回す。だが直ぐに彼は看守と同じ運命を辿った。
(ついてない役回りだったな)
 見当外れの場所に狙い撃ったボウガンの矢が壁に突き刺さる。
 同時に暗殺者は落ちた剣を拾い、壁を蹴り射手に斬撃を放つ。汚い悲鳴と血しぶきを上げて射手は絶命した。
「くそっ!」
 最後に残った男は剣とカンテラと仲間を捨て、背を向けて走り出した。応援を呼ぶための冷静な判断だったが、数秒後には背に剣を突き立てられ仲間達に続いた。
 何か重大な違和感を感じつつ。ふう、とため息一つついてγは思案した。これからどうすべきか。
 帰る場所など無いが――。
「とりあえず、逃げるか」

 太陽の位置からして外は朝だったらしい。
 程なくして大騒ぎとなったルベルの館を尻目に、γは街の中に消えた。


 夕刻。領主の館の庭の薔薇園にγは佇んでいた。任務の事などは既に思考から抜け落ちている。何故ここに来たのかは自分でも説明が出来なかった。
「幻惑候の呪い、か」
 自分が世界から疎外されていることに気がついたのは館を脱出してすぐの事だった。一時的に姿を消すだけの魔法だったはずが、今では誰も自分の姿を見ることが出来ず。そして誰も自分の声を聞くことが出来ない。手鏡や水面にも自分の姿が映らなかった。
 自分を探す衛兵は自分の傍を素通りし、露天商の売り子は自分の声に気がつかない。人も馬も自分を避けて通るようなことはせず、物音を立てても不思議がられるだけで自分の存在には気がつかない。
「それとも、一族からの役立たずへの呪いかな」
「……どうしたの?」
 自分に向けられた少女の声。振り返ると怪訝な顔をした白の姫が立っていた。
 あの時と同じ赤玉石の瞳がγを呪縛する。
「俺が見えるのか」
「はい」
「何故?」
「わかりません」
「俺が怖くないのか」
「怖いです」
「何故逃げない」
「逃げてほしくないんでしょう?」
「君の名前は?」
「ネージュ・レヴィ=ブリュールです」
「俺はγだ」
 いつの間にかγはまるで騎士のようにネージュの前に跪いていた。ネージュは戸惑っていたが、すぐに微笑んで忠誠を受け入れた。
「私を殺した責任、取ってくださいね」
 彼女は、いつか言ってみたいと思っていた言葉を彼の耳元で呟いた。
「……ああ」
 自分は魅了の魔法でも使われているのだろうか。白の姫の姿を見るのが、そして声を聞くのが心地よかった。
 少なくとも、自分と世界を繋ぐのは彼女だけだった。
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カウナス戦役 - 18


 ルベル・ゲーリング男爵の館には地下牢というものがある。
 一切の光の射さない闇の世界を、カンテラの光とともに二人分の足音が響く。
 トーガを着た牛蛙と陰口を囁かれるルベルが看守を従え、目的の牢へと向かう。
 鉄格子の向こう、その部屋の主はふてぶてしく寝転がっていたが、カンテラの光に反応して顔を上げた。
「ご機嫌は如何かね?」
 ルベルが下品な笑みのまま尋ねる。だが目は笑ってはいなかった。
「悪くは無いね。ここは寒くも暑くも無いし、雨露も凌げ食事つきだ」
 檻の中の若い男が軽口を返す。
「貴様の名前は?」
「さあね……、γとは呼ばれていたが。これは名前なのかな?」
「お前の雇い主は?」
「俺の教官だ。υと呼ばれている。どんな奴かは知らん」
「お前の所属は?」
「さぁ? 一族とか里とか呼んでいたが名前は知らん」
「お前は里は何処にある?」
「知らない。目隠しをされて馬で運ばれたからな」
「今までもか、この街にもか」
「そうさ」
「どうやって逃げるつもりだった?」
「迎えが来る予定だった。誰かはわからん」
「つまり何も知らないということだな?」
「そういうこった」
 若い男に笑顔でルベルは宣告した。
「よく解かった。お前は処刑だ」
「それだけは勘弁を」
 男爵は持っていたカンテラを暗殺者に叩き付けた。
「ネージュ姫を傷つけた罪は万死に値する……!」
 ぴくりとγが反応した。
「……あの子は死んだか?」
「心臓は貫通していない」
 そうか、と呟いてγは不貞腐れたかのように向こうを向いた。
「明日、お前の処刑を執り行う」
 それだけ言うとルベルは用は無いとばかり踵を返した。
 慌てて看守が代わりの灯りを点け主人に追従する。
 再び無音の闇の牢獄に一人残されたγは何事か呟いていたが、すぐに寝息を立て始めた。

 地下から戻るとルベルはベッドに横たわりつつウオッカを杯に注いだ。
 すぅーと一息に飲み干し、思案に暮れる。
 ビリニュスは典型的な城塞都市だ。外敵から身を護るために城壁が廻らされている。夜は城門は閉じられるし、昼も自由に出入りできるものでもない。秘密裏に入るルートは限られている。
 暗殺者を差し向けるだけの能力と動機を持ったもの。
「……ベルトリッチか」
 ルベルはそう結論付けた。第四軍の馬車にでも忍び込めば入ることは楽なものだろう。そして街から出ることも。
 ルベルはテーブルの上に散乱した書類から白の姫の肖像を取り出し、しばし眺めていたが、ノックの音がすると慌てて書類の中に隠した。
「誰だ」
「僕ですよ」
「若造か、入れ」
「何時になったら名前覚えてくれるんですか」
 苦笑しつつリューゼルが寝室に入った。貴公子然とした雰囲気のまま、足元に気をつけつつ椅子に座る。床にも書類の束が散乱してうかつに歩けないのだ。重要書類なので誰も寝室には入れない為、年々足の踏み場が無くなっていく。
「暗殺者は唯の鉄砲玉だった。明日処分する。で、ルーミスの動きは?」
「いつもどおりですね。いつもどおりを装っているのかもしれませんが」
「まあ、奴は腹芸するような性格ではないだろう」
 やる気の無さそうな肥満体の男の問いに、金髪の優美な行商人がテーブルの書類を整理しつつ受け答えた。
「それより、ネージュ様がお目覚めになりましたよ」
「何!? 速く言え!」
 立ち上がろうとしたルベルをリューゼルが手を上げて制した。
「もう日付が変った刻です。姫君は侯爵様とお休み中です」
「そうか……まあ喜ばしいことだ」
「随分とご執心ですね。エディト嬢やヴィットーリア嬢はいいのですか?」
 意外そうに、リューゼルは書類の整理の手を止めて言った。
「金でこんな醜怪な男に媚びる売女どもと姫を一緒にするな」
 自覚はあるのか……と苦笑しつつリューゼルは同意した。
「この姿はな」
 リューゼルの苦笑の意味を察し、ルベルはウオッカをまた注ぎながら笑った。
「呪いなのさ」
「呪い?」
「真実の姿はとても格好いい紳士様なのだよ」
「それなら僕と男爵はライバルですね」
 二人は吹き出し、笑いながら二つのグラスにウオッカを注いだ。
「姫君のために」
「カウナスのために」

myPC環境。

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◆hardware
NEC VALUSTAR typeG
 WindowsXP Pro SP2
 Pntium4 2.78GHz / 1.00GB RAM
 PC本体。NECダイレクトで購入。
Brother MyMio DCP-110C
 個人向けの薄型複合機。
BUFFALO HD-H250U2 USB2.0 外付
 一般的な外付けHDD。250GB。PCゲームのインストール先に。
iPod nano
 小型MP3プレイヤー。2GB。

◆software
Mozilla Firefox
 上級者用タブブラウザ。
Mozilla Thunderbird
 上級者用メーラー。
TeraPad
 テキストエディタ。サイトのタグ打ちはこれで行っている。
Story Editor
 アイデアプロセッサ。小説書きやtrpg設計で重宝。
LimeChat
 IRCクライアント。オンラインセッションで使用。

◆Website
Wikipedia
 web百科事典。
YouTube
 画像配信サイト。
Amazon.co.jp
 大手通販サイト。

カウナス戦役 - 17

「ルーミス殿。夜遅くこの雨の中をご苦労様です」
 クラウス・ゲーベンバウアー侯爵は、雨に濡れた赤い鎧と焦げ茶のマントの巨漢の騎士を、労う様に出迎えた。
「任務ですので」
 騎士は持成しを辞し、急使からの届け物を懐から取り出す。
 老侯爵は厳しい顔でその騎士からの封筒を受け取った。蜜蝋と正式印による封印、そして差出人名としてマリア・ベルトリッチの名前は侯爵を戦慄させた。
「……確かに頂きました。明日にはお返事致しましょう」
「確かにお届けしました。では明日に」
 礼をして踵を返し遠ざかる騎士。
 息子が生きていればあの位の歳だろうか。そんな事をふと思いつつ後姿を見やると、政務室の扉を閉じた。そのまま内側から鍵をかける。
「……」
 無言でマホガニー製の政務机に座り、引き出しをあけると金色の鋏が姿を現した。慎重に封を切る。
 中から現れたのは数枚の羊皮紙による文書。

 敬愛するゲーベンバウアー侯爵へ
 侯爵殿に帝国と皇帝陛下、その勅命である十万人徴兵令への叛意を噂するものがいる。
 根も葉もない噂だと判断していたがこのたび重大な証人が現れた。
 私ベルトリッチは貴公の帝国への忠誠に微塵の疑いも無く、貴公の立場を護りたく思う。
 ついては、調査の為アヒカール城塞へご足労をお願いしたい。
 よい返事を期待している。

「勘がいいのか……。揺さぶりを掛けに来たかな」
 手紙を読みながら、一人呟く。計画は周到だ。周囲には断片的な情報と命令しか与えず、ルベルとリューゼルしか全貌は知らない。
 ではベルトリッチは何処まで知っているのか。
 それが侯爵の疑問だった。自分の出方を見るようなこの手紙。恐らく確信がないのだろう。重大な証人とやらが本当にいるのならすぐさま自分を捕縛すればいいのだ。
(これがカードならば面白いのだがね)
 老侯爵に暗い笑みが浮かんだ。伊達に粛清狂いの先帝の治世を潜り抜けた自分ではない。彼はベルトリッチを高く評価していたが経験という点に於いては負けてはいない。
 この手紙はベルトリッチにとっては牽制の一手だろう。
 我々は牽制にすら翻弄される立場。カードの質は圧倒的に不利だったが、屑札がエースを屠ることもあるのだ。
(……だが今は時間を稼がなければならない)
 クラル海交易の合間にルベルは交易商ロリエから武具や弾薬、そして魔法の触媒を僅かずつ密輸していた。十分な数が揃うまでは動くことは出来ない。

 時間を確認すると侯爵は書類を片付け、窓の傍に飾られた白い花を手に取った。宴の席で倒れた白の姫を思い出す。
(……あの暗殺者もベルトリッチか?)
(リューゼルの血脈も知っている?)
 そうだとすればベルトリッチの嗅覚は尋常ではない。
「……ふ、まさか……」
 今日はもう眠ろうと扉を開ける。

「ただいま。クラウス様」
 扉の向こうには白い夜着を着た絶世の美少女が侯爵を待っていた。
「……おかえり。ネージュ」
 侯爵の裾をぎゅっと握り、身体を預ける。
「お傍に置いて下さいね。クラウス様」
 ここに来るために何か大切な物を捨てた少女の声と瞳。
「……お前の居場所はここだよ」
 いとおしげに髪を撫でながら彼女の願いを叶える。
 自分が若ければ狂おしい感情に身を焦がしたかもしれない。
 だが自分はクラウス様である前にゲーベンバウアー侯爵だった。

カウナス戦役 - 16

 新月の夜。
 自分の目の前で事件が起こり数日。華やいでいた侯爵の館は再び古びた陰鬱な建物に戻っていた。天までも凶事を嘆くように涙の雨と曇りを繰り返している。
 侯爵は一見動じずに、そして口数少なく政務に没頭していた。ルベルは自分の屋敷に戻り、情報を収集しているようだ。
 全てが灰色に見える。それがカウナスの人々が置かれている情勢だった。

 リューゼル・ケーニヒスベルガーはその部屋に入り、扉を閉めると、中が真っ暗な事に気がついて魔法の灯しを照らした。蛍のような青白い燐光が部屋を照らす。
 この部屋はゲーベンバウアー侯爵夫人の死去後、十年来使われていなかったが、今ではその天蓋着きの豪奢なベッドにネージュ姫が新たな主人として眠っている。
「……調子はどうかな?」
 そう語りかける。しかし昏睡の眠り姫は答えない。
 暗殺者からリューゼルを庇い、凶刃の犠牲となったネージュ。リューゼルの魔法による治療により止血され、外傷は消すことができたが、意識いまだ戻らない。

「花の大公Liselotteよ、我に助力を」
 リューゼルは白い花に自分の生命力を吹き込むと、ネージュの傍に置いた。花を触媒に、自らの生命力を分け与える魔術。既に白の姫のベッドには数十本の色とりどりの花が供えられていた。
「……ネージュ。君は誰なんだい?」
 リューゼルは少女の白い髪を一房摘まみながら問うた。白の姫は髪の毛一本、血の一滴に至るまで微弱な魔力を帯びていた。魔術的素養は自分など及びもつかないだろう。彼は数百年を生きた魔族を間近に見たことがあるが、彼女の雰囲気はそれに似ていた。
「……君が魔族だとしても」
 指を絡め、囁く。
「今度は、僕が君を護るからね」
 反応の無い白の姫の寝顔を見て、ふと悪戯心がリューゼルの脳裏をかすめた。姫の額に手をあて、顔を近づけると、そっと領主の愛妾の唇を奪う。

「……リューゼル様?」
 王子様のキスによって開かれる姫のルビーの瞳。
 心臓が止まるような思いを抑えつつ、何食わぬ顔で受け答えた。
「苦しくは無いですか?」
「はい」
「何かほしいものは有る?」
「いいえ」
「……よかった。本当にね」
 白の姫は何とはなしリューゼルと絡めていた指先を見やり、花に囲まれた自分を見やった。再度視線が合う。
「ありがとう、リューゼル様」

はーつおぶあいあん2



ジャスリー・クラルヴェルン:絶対王政主義者
PowerHungry Demagogue 「権力に飢えた扇動家」
「権力に飢えた扇動家」は執念深く、怒りと憎しみに
満ちた人物ですが、不満を抱えた大衆を虜にする悪
魔的なカリスマ性を持っています。この人物の真の
目的は、全世界を自分の望むように作りかえること
です。

スキル:8
管理技術 電子工学 数学 化学 ライン生産


ネージュ・レヴィ=ブリュール:自由経済派
Happy Amateur 「幸運な素人」
「幸運な素人」が現在の地位に就けたのは偶然の
賜物であり、政治に関する知識は少しも持ち合わせ
ていません。しかし職務の重大さに呆然としている
彼の薄ら笑いは、人々の目にはむしろ自信の表れ
のように映ります。彼にとっては幸運なことに、人々
は彼の途方もない無能さにまったく気づいていません。

スキル:5
ロケット工学 航空学 技術効率 電子工学

GBAふぁいえむ

予備知識無しで始めたら【軍師の性別と名前】を聞かれた。

…? と思いつつ「軍師キャラといったらこいつだなあ」と、マリア(・ベルトリッチ)と決定。
すると遊牧民のテントで目が覚める。
剣士の少女がでてきて一緒に山賊退治。

『見習い軍師マリアと少女剣士リン。
 奇妙な二人旅がこうして始まった』

…(゚Д、゚)

『美しい貴方! マリアさんとおっしゃるのですね! リキア騎士の力お見せしましょう!』

…(゚Д、゚)

ベルトリッチ幼少時ということにしよう。

カウナス戦役 - 15

 夕暮れの公園には茜以外に人影は無かった。
 ベンチに座り、時計を見る。…午後6時。
(……寒い)
 あの世界と同じく、この世界も季節は秋だった。制服とコート一枚の茜に冷たい風が吹く。茜はアルビノの頼りない外見の通り、身体が弱かった。
(……クラウス様)
 身体を縮こませて、愛しい人の姿を重い浮かべる。愛しい人。孫ほども歳の離れた老人を自分は好きになったのだろうか。解からないが、侯爵の前の自分は笑顔だった気がする。そして現実世界の自分の表情は凍り付いていた。
(リューゼル……ルベル……)
 四人で笑いあったお茶会を思い出しつつ、冷たくなった自分の指を見る。薄紫に塗った爪も、豪奢な白銀の髪も、理想の体型も元に戻っている。


 夢だったのだろう。


「……神様お願い」
 小さく呟いた。

「こんばんは」

 見上げると、茜の目の前に白いローブを纏った女が立っていた。
 ローブ。“向こう側”の衣装だ。長い杖を抱えつかつかと茜に歩み寄る。歩く姿だけで人を魅了できるかのような優美な美女だった。
「夢を見たでしょう?」
 女は優しい柔らかい声で語りかけた。茜は動けなかった。紫水晶のような美しい瞳に射抜かれ、蛇に睨まれた蛙のように凍りついた。
「……はい」
 戸惑いながらそう答える。女はにこやかに微笑みながら続けた。
「私はジャスリー。悪魔です」
「……悪魔?」
「ええ、悪魔」
 逃げなければ。
 直感的に茜はそう思った。そうしなければ、自分はこの悪魔の虜となる。だが身体は自分のものでないかのように動かない。
 震える少女に悪魔はゆっくり華奢な手を差し伸べた。
「……もう一度、夢を見ませんか?」
 恋人に囁くような甘い声で悪魔が言った。
「ただし、もう二度と目覚めることはできなくなります」
「……」
 悪魔の言葉が心に染みていく。一瞬の逡巡の後、肉体に次いで精神が魂を裏切った。
 震えながら手を伸ばし、悪魔の手を取る。柔らかい、暖かい手。
「……ぁ」
「……可愛い子」
 悪魔に手を引かれ、両の手で抱きしめられる。母が娘を、姉が妹を愛しむ様に。
 薔薇の香りと暖かな温もりが茜を包む。その心地よさに次第に眠くなっていく。何時しか身体の震えは止まっていた。
「良いものをあげますね」
 悪魔が虚空から宝石を散りばめた王冠のような黄金の髪飾りを取り出した。茜は目を閉じ、それが髪に載せられるのを待った。
「あぁ……あ……私……」
 ティアラが載せられた時、全身に快感が走った。髪がスルスルと伸びていくのが解かる。胸や腰が艶めかしく変化していく。くすくすと悪魔が笑っている。目を開けると悪魔の瞳の中に赤玉石の瞳の美少女が映っていた。紫水晶と赤玉石の瞳が近づき、唇が触れる。官能が少女の変貌を加速させる。


「……貴方の名前は?」
 生まれ変わった少女をよしよしなでなでしながら悪魔が問うた。
「ネージュ・レヴィ=ブリュールです。……ジャスリー様」
 薄れ行く意識の中で、きっと今の私は笑顔なんだろうな。とネージュは思った。悪魔の胸の中で眠りに堕ちていく。
「ようこそ、闇の世界へ」
 悪魔が囁いた。

カウナス戦役 - 14

 けたたましい金属音がして、少女は目を覚ました。
「ううっ……!」
 金属音が止まらず少女は混乱したが、枕元に目覚ましを見つけると慌ててボタンを叩いた。
 音が止まる。代わりに秒針が進む音がかすかに聞こえてくる。
 窓から差し込む朝日。遠くを走る車の音。雀の声。
「……」
 呆然と周りを見渡す。
 目に見えるものは見知った部屋。
「……夢だったの……」
 この世界ではネージュではないのだ。自分の名は山下茜。
 そして茜は朝が嫌いだった。
(今日も学校ね)
 ふぅ。とため息を一つ。ここには優しく起こしてくれる使用人はいないのだ。
 制服に着替え、トースターに食パンを放り込んで目盛を五分に合わせる。小さな冷蔵庫からマーガリンを出し、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを入れ始めた。
「……」
 黙ってパンを胃袋に放り込み、コーヒーで流し込む。茜はパンが嫌いだった。自分の口に合うものを必死に探してくれた料理長の顔を思い出す。

 パン一枚の朝食を無理やり終えると鞄を持って安アパートの玄関を開けた。そしていつもの道を歩き始めた。茜が歩き始めて数分で、いつもすれ違う女がいた。
「……」
 派手な衣服に濃い化粧、そして酒の匂いを撒き散らす仕事帰りの母親と、黙ってすれ違う。
 茜は母子家庭だが親子仲は険悪だった。学が無く、若い頃から遊びまわる母親。茜は自分の父親の名前も知らない。
 そんな母親を嫌って家出をしたことも一度や二度ではない。だが結局は親に頼らなければ生活もできないのが現実だった。

「1939年11月、ソ連軍がフィンランドに侵攻……。ソ連が苦戦して翌年3月に停戦。これは冬戦争と言われた。テストに出るぞ」
 歴史教師がやる気の無さそうに講義をしている。
 つまらない学校につまらない授業。友人は少なく、親友はいなかった。身体が弱く、休み勝ちな為成績も芳しくない。茜は学校が嫌いだった。

「――山下さん?」
「……はい?」
「授業終わりましたよ?」
 放課後。気がつけば外は夕焼け、教室には誰もいない。
 声を掛けてきたのはあまり覚えの無いクラスメイトだった。
「ごめんなさい。帰らないと」
 がさごそと教科書を鞄に詰め込む。
「どうしたんですか? 今日一日ぼうっとしてましたけど」
「……夢を見たんです」
 茜は弱々しく微笑んだ。

 夕暮れの中、一人で帰宅する。母親のいる家に帰るのは気が重い。
 ドアノブに手をかけると男の声が聞こえてきた。母の情夫の声だ。
 茜は自分を舐めるように見るこの男が嫌いだった。
 バチッ!! ドアの向こうから耳慣れない音が聞こえてくる。
 くぐもった母親の声。ヒュッと音がしたと思うと再度バチッ!という破裂音。
「……」
 茜は俯いた。それが何の音か心当たりがあった。ドアノブから手を離し、身を翻すと足早に立ち去る。鞭で打たれている母親など見たくは無い。


 茜はこの世界が嫌いだった。

カウナス戦役 - 13

 ゲーベンバウアー侯爵の愛妾が暗殺者に襲われ生死不明。
 その報せを聞いてアヒカールの城主、マリア・ベルトリッチは部下に再度情報を確認させた。
(失敗しただと?)
 赤の将軍は再度同じ報告を聞くと、そうか、と呟いて椅子にもたれた。
「……下がってよろしい」
 そのまま目を閉じて眠るように考え込む。
「たかが一介の行商人ではありませんか」
 配属されたばかりの若い副官が恐る恐る尋ねた。
「予定外なのだ」
「は?」
「四万人もの徴兵令に対して暴動が起こらない。
 侯爵殿が突然四十歳年下の愛妾を囲う。
 不確定因子の暗殺には失敗する」
「……はぁ」
 理解できぬまま相槌を打つ副官。
「……一の事件の影には十の予兆があるのだ」
 ベルトリッチは目を開けるとペンを取り出し、上等な羊皮紙を見繕って何事か書き始めた。
「侯爵殿が何か考えていると?」
「先々代の第四軍司令官なのだよ。侯爵殿は。叛乱軍に呼応されれても、まあ……困る」
 ベルトリッチは壁に掛けられた帝国地図を見やった。ここアヒカールとカウナスは帝国の西端部、皇叔軍の勢力範囲は南部。協調は不可能だろう。背後で撹乱くらいはできようか。
「ゲーベンバウアー候がそのような人とは思えませんが……」
「愚か者ではないだろうな。……だからこそ事は慎重に運ぶだろう」
 そして事を起こすとしたら勝算あっての事だろう。
「直ぐに動かせる兵は?」
「明日明後日というなら一万程度かと。物資備蓄は問題ございません」
「そうか」
「リガやタリンの駐留兵を集めますか?」
「いや、それはいい。参謀どもにカウナス叛乱時の対応を検討させておけ」
 ベルトリッチがペンを置いた。書類に皇帝より賜った印を押す。
「召喚状だ。これをルーミスに。侯爵殿をここに召喚する」
「は、ゲーベンバウアー侯爵をここに?」
「応じなければ、そのまま逮捕すればいい」

Mozilla Firefox DL

べいろす の発言:
職場で勧められてFirefoxをダウンロドしたが戸惑うぜ
天神 粢 の発言:
ほむほむ
べいろす の発言:
やべえ
べいろす の発言:
ファイアフォックスでの表示とインターネッツエクスプローラの表示が全然違う
べいろす の発言:
やばい、ファイアーフォックスだとレイアウトが完全に崩れて見えるww
天神 粢 の発言:
第三次ですな…


スタイルシートも無効になってるみたいだ…orz

カウナス戦役 - 12

ベイロス帝国の治世の基本は恐怖による統治である。
愛とか友情などというものはすぐに壊れるが恐怖は長続きする。
皇帝家は圧倒的な力を持って諸侯を率いねばならないのだ。

粛清、密告、暗殺、そして狂信。
諸侯は皇帝の顔色を伺い、そして皇帝は特権を下賜する。
領民から、属領から様々なものを収奪し、帝都は栄える。
そうしてこの帝国は結束を保ってきた。これからもそうであろう。

かくして暗殺を生業とする一族が生まれた。
皇帝や貴族に仕え、主君の見えざる手として障害を排除する。

彼は暗殺者だった。特に理由はない。生まれがその一族だったからだ。
彼には名前も無かった。そんなものはこの仕事に不要だ。
あるのは識別するための記号。三番目を意味するγという記号。

今回の仕事は比較的簡単だ。警備が厳重な要人という訳でもない。
狙われている自覚も無い。屈強の戦士という訳でもない。
そしてγには暗殺者として天性の才があった。

魔法の才である。それもかなり限定的な。自分の姿を消す魔法だけを習得し、それ以外の資質を全て棒に捨てた。暗殺にはそれで十分。

誰かの命を受けて、(――誰の命かは知らない。興味も無い)華やかな宴に紛れたγはゆっくりと獲物に近づいていった。
気配を殺し、足跡を殺し、誰にも触れられず、誰にも見られず、誰にも気づかれずに。

リューゼル・ケーニヒスベルガーは貴婦人と談笑しつつワイングラスを傾けていた。なるほど、確かに行商人にしては気品がありすぎている。聖者という異名も頷けよう。γに取っては何の意味も無いが。

一息の距離に入った。
腕を回し、鋭利な刺突用の短剣を装着する。独特な形状のその短剣は名前をジャマダハルといった。
聖者は死神がそこにいるのをまだ知らない。

死神が音もなく跳躍した。



宴の間に血が舞った。
だが、胸を貫かれたのはリューゼルではなく、間に飛び込んできた白の姫だった。

その永遠の一瞬、ネージュの赤い瞳とγの黒い瞳と交差する。
(自分が見えるのか?)
そうでなければこの状況をどう解釈するのか。だが状況を整理してもγは動くことができなかった。
(……美しい)
美しい? この状況で自分は何を考えている?
白の姫の小さな唇が何かを囁いた。悲鳴だったのかもしれない。

当事者達を含めてその一秒は誰もが動くことが出来なかった。
だが次の一秒では甲高い硝子の破裂音が宴の間に響いた。
状況を整理する間も無く、γは意識を失った。


破裂したボスポラス産のワインボトルを握り締め、ルベル・ゲーリングは叫んだ。
「衛兵!」

さんごくし7



べいろす の発言:
なにこのくそげー
Sigel: の発言:
ん?
べいろす の発言:
さんごくし7
Sigel: の発言:
どうした?
Sigel: の発言:
水軍にでもまけたか
べいろす の発言:
混乱くらってなにもできないまま捕虜になった
Sigel: の発言:
うn
べいろす の発言:
仕様か
Sigel: の発言:
うn
Sigel: の発言:
そのゲーム混乱強すぎ
べいろす の発言:
くそおおおおお

2ch某板なりきりbbs


やってみた!



……

………

1レス20?30分もかかって相手が寝落ちしたyo! orz

数日後再度参加したが今度は1レス15?20分。やっぱり相手が寝落ちしたyo!orz

自分の文章を見返すと恥ずかしくて直視できないne!

何処の板の何処のスレかは聞かないで (((( ;゚Д゚)))

カウナス戦役 - 11

 華やかな宴。
 着飾ったカウナスの領主達、騎士達、貴婦人達。
 豪華な料理や高価な酒が振舞われ、談笑が絶えない。

 ネージュはその宴の主役だった。ルベルから贈られた純白のドレスに、瞳と同じ色のルビーと薔薇を飾る。
 侯爵に連れられ、見知らぬ大人たちに会うたびにドレスの裾を摘まんで一礼する。
「なんとお美しい」
「さすがはゲーベンバウアー様」
「まるで妖精ですな」
 白の姫に美の崇拝者は事欠かなかった。
 愛妾という触れ込みだが、侯爵は三人の子供を戦争と事故と疫病で亡くしている為、妊娠でもすればその子は跡継ぎということになる。尤も、侯爵にその気はなかったが。
 挨拶が一段落すると、侯爵と貴族たちはネージュには分らない難しい話題に入った。向こうではルベルが大笑いをしながら羊肉を頬張りつつ西方交易の話をしている。リューゼルは自分とは逆に女性陣に囲まれて対応に苦慮しているようだ。

 その宴の席の中に、笑顔でない人間がいた。
 赤地に白い矛の紋章を胸に飾った騎士風の男。
 礼服の下に鎖帷子を着込み、壁際でワイングラスを傾ける。
「お疲れですか?」
 不意に声をかけられて彼はネージュを見やった。ルビーの瞳に当てられ、騎士は不器用に笑みを浮かべた。
「…こういった華やかな場所は不慣れなもので」
「それなら、私もです」
 とてもそうは見えませんがと苦笑しつつ、騎士は一礼した。
「帝国第四軍のルーミス・シーゲルフェルドです。ネージュ様」
 第四軍。たまに聞く単語だ。どこか遠くで戦争中で税金などで大変とは聞いていたが、詳しいことは聞いていなかった。
「どうして私のようなものにお声を?」
 ルーミスの素朴な疑問に「お注ぎしますね」と酒瓶を傾けつつ、彼女は言った。
「寂しそうでしたから」
「どういうことですかな?」
「なんとなく、そんな気がしたんです」
 曖昧に、ネージュは微笑んだ。

「――え?」
 突然、奇妙な感覚がネージュの神経に走った。この賑やかな宴の喧騒の中、足音が聞こえてくる。
「どうか致しましたか?」
 周囲を見渡し始めた白の姫にルーミスがいぶかしんだ。
 足音が近づいてくる。例えようも無く不吉な予感がした。
「い…え」
 軽い目眩がして、ネージュは目を閉じた。脳裏にイメージが浮かぶ。死を纏った男のイメージ。
「顔色がすぐれないようですが」
 宴の喧騒やルーミスの声がどこか遠くで聞こえるような気がした。
 足音は止まり、扉が軋みながら開く音が聞こえてくる。
 死はこの宴の間に入っている。そして誰も気づかない。
「姫!」
 肩をつかまれ、ネージュは我に返った。
「…大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい」
 ドレスの裾を持ち上げて一礼すると、そそくさと身を翻す。
 ルーミスはあっけに取られていたが、気を取り直すと注がれ直したグラスに手を取った。
「確かに可愛い子だ」
 再び笑みが消える。生粋の武人としては暗殺の見届け人というのは意に沿わぬ任務だが、任務を選り好みできる立場でもなかった。
(だが代々帝国が傾いたときの原因は常に女だった)

新年

2007年。あけましておめでとう。











…書くことが無い!
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